その6「貴方は紙を信じますか?」 ~アンケートに潜む罠~ の巻
NPOあつぎみらい21のメールマガジン「メルマガ起業セミナー」に寄稿しました。
専門用語を使わないマーケティングのハナシ。
その6「貴方は紙を信じますか?」の巻
▼その6 「貴方は紙を信じますか?」 ~アンケートに潜む罠~ の巻
先日、とあるカンファレンスに参加し、大手女性肌着メーカーであるトリンプのマーケティング戦略について聞く機会がありました。
トリンプはこれまで名物社長のユニークな販売戦略で業績を伸ばし続けました。
その社長の引退後も新たな戦略を立て、一時的に転換期みる後退があったものの、国内2位の下着メーカーとして、常に業界の存在感を持ち続けています。
また同社は、自社を支持する顧客層が20~34歳に集中していることに着目し、この層へのセールスプロモーションをビジネスとして請け負っているなど、常に新たな視点を探し、自社の収益につなげていく積極性をも持ち合わせています。
※詳しくは下記リンクの同社リリースを参照の事。
さらに今回のカンファレンスでの講話において、iPadを集計端末として用い、リアルタイムで集計可能なアンケートの収集を実施するという新機軸を打ち出していました。
従来のマーケティングでは顧客を「集団」と捉え、その購買特性を分析する事が主たる目的でしたが、これにより個々の購買特性まで割り出そうと意気込んでいます。
さて、今回の講話の中で、注目したのは業界2位という規模にもかかわらず、購買頻度の高低や1回の買い物額以外に「バーゲンハンター」と呼ばれる、安売り広告以外で絶対買わない購買層を識別し、振り回されない努力をしている事です。
起業して間もなくの時点では、このような大規模なアンケートをとることは不可能です。しかしながら、大企業ですら生き残る為に、顧客を分析する事を怠らずにいる以上、何もせずに放って置くと、自ずと勝負は見えてしまいます。
では、どの様にすれば良いでしょうか?
アンケートをとる事はとても重要ですが、やみくもにデータをとってしまうと、これら「バーゲンハンター」の意見が集約されてしまい、自社が求める本当の顧客を見失う可能性があるのです。
たとえば、クーポンや安売り広告で客集めに勤しんでいる店に通う客は、そのお店や商品に興味があるのではなく「割安感」や「値引率」に惹かれているのです。
皆さんも飲み会の幹事役を引き受けた場合は、料理や店の雰囲気ではなく、クーポンや飲み放題の有無で選んだことがありませんか?
そのほか、携帯電話そのものや、美容室など消費者側に立場が変わると、思い当たる節はいくらでもあると思います。
もしもの事ですが・・・
アンケート結果 1位「もっと安く!」
2位「もっと品質の良いものを!」
3位「もっと大量の品ぞろえを!」
・・・こんな結果だったら、どうしますか?
つまり自社の顧客とすべき対象(=コンセプト)が固まっていない内にアンケートを実施してしまうと、とんでもない落とし穴が待っている・・・と言う事です。
アンケートとは、実施する前に期待すべき結果を予測し、その答えが出るように質問を考えるのが原則です。予測と結果の違いを分析し、店づくりや商品サービスへ反映させるのが本来の目的なのです。
また、来店客数の少ない小規模のお店や、不定形のサービスを扱う分野では、アンケートも紙に書かせるのではなく、質問事項を接客のトークの中に混ぜ込んで、顧客から反応をとるなどの工夫が必要です。その際は、一人の顧客に全ての質問をとる様な無理をしない事がちょっとしたコツです。
さて、今回の話は「顧客と向き合う前に、自社の方向性を固めよう。」と言う事を、きちんと理解できたでしょうか。
また面白いビジネス視点を見つけたら配信します。次回をお楽しみに!
<参考資料>
トリンプ・インターナショナル・ジャパン(株)
AMO’S STYLEを中心とした直営店舗でのマーケティング活動のご案内
http://www.triumph.com/jp/cw_assets/JP/baitai.pdf