その9 デフレビジネス崩壊、その前に。の巻
NPOあつぎみらい21のメールマガジン「メルマガ起業セミナー」に寄稿しました。
専門用語を使わないマーケティングのハナシ。
その9 デフレビジネス崩壊、その前に。の巻
▼その9 デフレビジネス崩壊、その前に。
最近、競争の激しい「デフレビジネス」に陰りが出ています。理由もいくつかありますが、典型的な動きとしては2つ。
ひとつ目は市場飽和による競争の単純化。ふたつ目は急激な円安による、調達コスト(材料・仕入れコスト)の高騰です。
この潮目ともいえる現象は、これまで時勢の流れに乗ってきた既存ビジネスでは脅威でしかありませんが、これから新たなビジネスに臨む起業家には最大のチャンスが来る事になります。
▼市場飽和による競争の単純化
これは市場競争が成熟し、どの店にも同じような商品が並び、価格の差別化でも限界来たときにおこります。牛丼や回転すし、家電量販店を見ればよくわかると思います。
牛丼はその人の好みもあるかと思いますが、米国産の牛肉を使用し「味」にこだわる吉野家でも、さすがに100円を埋める事はできません。
2月にBSE禍がおさまり米国産牛肉が生後30カ月以下まで輸入が解禁になり、豪州産との価格差が縮まると競争力が復活しました。その後、並盛280円の反抗体制をとったことは皆さんご存知の通りです。
ただ「すき家」「松屋」から顧客を取り戻しているのですが、お互いの顧客を奪い合うばかりで、市場そのものが大きくなったわけではなさそうです。
※余談ですが、市場が大きくなる可能性があるとすれば、高価格指向に走ったマクドナルドから顧客を奪うことでしょうか。
▼調達コストの高騰
デフレビジネスにとって、この円安は向かい風です。これまでの「超円高」に支えられて、海外から安い品物を大量に買い付けることで、冷え込んだ消費者の購買意欲を刺激し、国内産業を壊滅状況に追いやっていました。
このようなデフレビジネスの武器は、1に「安さ」、2に「安さ」・・・・です。
この安さがなければ消費者にそっぽを向かれてしまいます。逆に言えば消費者の意識は「安さ」以外の興味はないのです。同じ安さになって初めて「品質」や「味」に気持ちが向いています。
みなさんも、価格コムやアマゾンのネットショップサイトでは、よほどの事でない限り、無差別に最安値の業者から買った経験があるでしょう。今後も最安値で買う事は間違いなさそうですが、円安が影響する分野は、その最安値が上がり始めており、出店者は買い控えの恐怖と戦うことになるはずです。
アベノミクスの経済効果と景況を表すレポートは回復を示す表記が増えましたが、まだまだ実感がわかないのが現実です。特にスーパーマーケットなどの大手流通業は、来るべき来年の消費税増税に備え、値下げ圧力を強めていますが、間に入る事業者の収益をこれまで以上に圧迫するだけなので、どこまで通用するでしょうか?
▼デフレ崩壊、中小企業の進む道。
小回りのきく経営が中小企業の持つ最大の利点とするならば、いまターゲットにするのは、日々の生活にあえぐ低所得者層より、株式の高騰で先行きの見通しが良くなった団塊世代やその扶助を受ける子供夫婦や孫あたりでしょう。
マスコミは常に大衆を弱者に置きますが、経済の動きによって損をする人々の裏で、必ず恩恵を受ける人がいるのです。長期金利上昇で住宅ローンを持つ世帯が、自己破産の危機にさらされる半面、不動産収入者や年金所得者の財布が大きく緩むことを忘れてはいけません。
大きな市場の流れに乗るのではなく、潮目の先を読み「これからの」流れにいち早く気づき行動することが重要です。
市場は小さくとも、自分のビジネスを充足するだけの規模があれば良いのです。
それは大企業の入り込む余地がない「儲かるスキマ」だからです。
・・・まさに、「鶏口となるも牛後となるなかれ」ですね!
さて、冒頭でふれたようにデフレビジネスは鈍化傾向です。安売りがされていない業界や、大手も実現出来ない「安売りの方法」を見つけた人は別にして、これからビジネスを始めようとする人や、商品、サービスを開発し新たなビジネス展開を考えている人には、利幅を削るだけの単純な「安さで勝負」は、タイミングが悪い事が理解できたでしょうか?
また面白いビジネス視点を見つけたら配信します。次回をお楽しみに!
<参考資料>
・JCASTニュース
「牛丼戦争、5月は吉野家に軍配」客数30%伸び2カ月連続の売り上げ増
http://www.j-cast.com/2013/06/05176656.html?p=all
・故事ことわざ辞典「鶏口となるも牛後となるなかれ」
http://kotowaza-allguide.com/ke/keikoutonarumo.html