経済レポート読み下し Vol.3 ~TPPに見る経営戦略の必要性~

経済レポート読み下し ~TPPに見る経営戦略の必要性~ 
NPOあつぎみらい21のメールマガジン「かながわ Business Network」に寄稿しました。

伊豫田 中小企業診断士事務所が寄稿したビジネスコラム


経済レポート読み下し
~ TPPに見る経営戦略の必要性 ~


 

▼TPPは是か非か? 社内でも意外にありがちな議論。

 首相交代後の課題としてTPPの参加議論が再度議論に挙がる様になりました。日本単独で世界に及ぼす経済効果が薄れている以上、こうしたネットワークへの参加は必須であると考えられています。

 反対意見の中に農業の衰退を叫ぶ声がありますが、日本のそれは大半が個人事業主かつ兼業であり、これらの保護の為にはTPP参加はもってのほかと言う事です。

 このような中で、議論は平行線を続けている訳ですが、それぞれにメリット・デメリットが叫ばれており、相変わらず今回も決着がつきそうにありません。

 一番の問題は、「国家として目指すべきは何か?」「国民の利益の源泉を何に求めるのか?」が定められていない事です。例えば国家の発展を経済成長率で見るならば、TPP参加が答えになりますが、食糧自給率なら不参加が正解となるわけです。

 両陣営とも、それぞれの利害関係で説く訳ですから、自分の属する産業の保護を強調し、相手の説のアラ探しをする様になっています。

  賛成派の主張=アジア諸国との競争に懸念、ものづくり産業の衰退

  反対派の主張=米国主導の政策に懸念、食糧自給率の低下

 翻って企業の成長も同様に、5年後のあるべき姿を定めずに事業の投資案を検討すると、不毛な会議だけが盛んになり、結局「長引いた為に商機を逃した」という具合になりかねません。

 みなさんの会社では、きちんと成長戦略が定められていますか? 大事なのは、新規の成長を望む場合は、少なからぬ犠牲が付きものだと言う事です。古の兵法書「孫子」にも四方八方を守ると全てが手薄になると記されています。

 社長が会社の方向を定める事を怠ると、部門内の利益を優先させる議論が盛んになり、TPPと同じ状態に陥る恐れが生じます。組織内部の衝突で社員が疲弊する事ほど無駄なものはありません。

 新規事業で起こる撤退条件の不備などが、良くあるパターンです。もし会議で先送りが続いている案件があったら、判断をする前提(=方針)が定まっていない事を疑ってみてはいかがでしょうか?

 
TPP=Trans-Pacific Partnership(環太平洋戦略的経済連携協定)

<参考資料>
農林中金総合研究所 国際経済体制の再構築と日本の対応
http://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n1109re2.pdf

経団連 経団連成長戦略2011
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2011/089/honbun.html#part2-2