経済レポート読み下し ~中小企業白書2011から~
NPOあつぎみらい21のメールマガジン「かながわ Business Network」に寄稿しました。
経済レポート読み下し
~ 中小企業白書2011から (その2)~
▼中小企業白書(その2) 「いつまで続く? 電力不安。」
中小企業庁から発表された2011年度の中小企業白書から、気になる統計データを拾い、今後の中小企業が元気になる為のヒントを解説します。
▼中小企業に対する東京電力のインパクト
(白書43ページ~)
震災直後に東京電力の送電能力低下から、計画停電が実施され、首都圏の企業活動に多大な影響を及ぼしたことは記憶に新しいところです。
この夏に向けて東京電力は5000万キロワットの送電能力を回復し、今のところ電気事業法27条による電力の使用制限などの施策により、最悪の状態を免れています。しかしながら、7月後半は幾分気温が下がったものの、8月にはいり再び猛暑となり、危機が完全に去ったとは言い切れません。
そこで今回は、震災における東京電力の影響がどの程度及ぼしたか。また、今後についての考察を中小企業白書から読み解いていきます。
▼関東地方でも20%~50%のダメージ ~鉱工業生産指数より~
業種 Feb Mar Gap
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輸送機械工業 80.9 40.3 ▲50.2
ゴム製品工業 79.9 58.1 ▲27.3
石油・石炭製品工業 91.3 67.0 ▲26.6
鉄鋼業 103.1 76.9 ▲25.4
一般機械工業 93.0 71.5 ▲23.1
鉱工業 91.1 74.2 ▲18.6
これは白書48ページの(第1-2-16図)の抜粋で、関東地方における、前月比の「鉱工業生産指数」の結果をあらわしています。
この指数は、鉱工業製品を生産する国内の事業所における生産、出荷、在庫に係る諸活動、製造工業の設備の稼働状況、各種設備の生産能力の動向、生産の先行き2か月の予測の把握を行うものとなっています。
さて、2011年の2月と3月で、すべてのものづくり産業が大幅なダウンを余儀なくされていることがわかります。11日の発生ですから、実質20日分なので月次ベースに直すとさらに被害が上積みされることになります。
この夏の電力不足を乗り切ったとしても、政府の原発政策が不透明なため、点検後の原発再稼働が出来ない可能性も残っており、停電のリスクは完全に消えていません。再び電力不足の状態に陥ると、そのインパクトは地震・津波による直接の被害を割り引いて考えたとしても、10%以上の減少は避けられないでしょう。
また、その他の経済環境を誘引する事象として、セーフティネット貸付などの政府による緊急経済対策が有効に働かなかった場合や、昨今の超円高や米国債の信用不安が進行するなどの影響が複合的に作用した場合は、世界不況へと発展する可能性を否定できません。・・・もちろん最悪のケースとしてですが。
▼中小企業が短期的にとる対策とは?
中小企業の企業努力ではこのような事態を制御することは、間違いなく不可能です。 前回のコラムでも書きましたが、中期的には新たなビジネスモデルの模索が必要となるほか、今後起こりえる諸問題に対して、どのような初動対応が必要になるでしょうか?
白書49ページに、震災後の賢明な初動対応により早期に回復した宮城県の中小企業3社の事例を紹介してあります。 どの企業もサプライチェーンを維持することが、経営者のとるべき判断とされています。 これが短期的な経営継続のベストプラクティスと捉えてよいでしょう。
最後に、今後のすべての災害に対応できるよう、自社が守り抜く「コア事業」を明確にし、それを維持するための対策を講じておくことが重要なポイントです。
中小企業庁では、このような対策(事業継続計画=BCP)をとる企業のために、マニュアルを用意しています。詳しくは下記リンクを参照ください。
このホームページには、導入が難しいことも書かれていますが、基本的な考え方は「5S」です。まずは事業の整理・整頓から考えましょう。いざという時に、どの事業を「整理」、つまり切り捨てるか、あらかじめ「整頓」、定めておきましょう。ということです。
今後も先行き不透明な状態が続きますが、みなさんの会社においても今回の震災を教訓に、どのような対策をとるべきか話し合ってはいかがでしょうか?
<参考資料>
経済産業省 電気事業法第27条による電気の使用制限の発動について
http://www.meti.go.jp/earthquake/shiyoseigen/index.html
中小企業庁「中小企業白書」2011 第一部 第2章
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h23/h23_1/110803Hakusyo_part1_chap2_web.pdf
中小企業庁 中小企業BCP策定運用指針
http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/