アンケート調査に見る起業家の気持ち(第2回)
NPOあつぎみらい21のメールマガジン「メルマガ起業セミナー」に寄稿しました。
アンケート調査に見る起業家の気持ち
(第2回)
▼起業でどんな思いを実現するのか?
こんにちは、NPOあつぎみらい21の伊豫田です。今回も引き続いて「起業家のスタートアップ活動に関する調査研究」をもとに話をすすめていきます。
起業をした人のほとんどが、起業する前の思い通りに行かなかったと述懐しています。これは無理もない事で、前回の統計にもあるように、多くの人が初めて起業する為におこる現象です。では、先人たちは起業前にどのような思いがあったのでしょうか? そのあたりを説明したいと思います。
▼今回の統計結果
「起業に関する意識」
1.過去2年以内にビジネスを始めた人を知っていますか
はい 40.3% どちらともいえない 9.5% いいえ 50.3%
2.新しいビジネスを始めるために必要な知識、能力、経験を持っていますか
はい 45.6% どちらともいえない 31.2% いいえ 23.2%
3.失敗する恐れがあり、起業を躊躇していますか
はい 44.5% どちらともいえない 31.2% いいえ 24.3%
4.以前から独立したいと思っていた
はい 69.2% どちらともいえない 22.4% いいえ 8.4%
5.起業したいのは社会的地位を獲得したいためである
はい 22.3% どちらともいえない 31.0% いいえ 46.7%
6.起業したいのは自分の技術やアイデアを事業化したいため
はい 55.4% どちらともいえない 26.4% いいえ 18.2%
7.起業したいのは事業や会社を通じて、積極的に社会貢献したいため
はい 38.5% どちらともいえない 35.3% いいえ 26.2%
8.起業したいのは自分の好きな仕事をしたいため
はい 75.6% どちらともいえない 18.5% いいえ 5.9%
9.起業したいのは自分の裁量で自由に働きたいため
はい 75.1% どちらともいえない 18.4% いいえ 6.5%
10.起業したいのは時間や気持ちに余裕を持ちたいため
はい 61.0% どちらともいえない 25.4% いいえ 13.6%
11.起業したいのは組織の枠から解放されたいため
はい 57.3% どちらともいえない 27.2% いいえ 15.6%
12.起業したいのは人間関係で悩みたくないため
はい 38.0% どちらともいえない 34.0% いいえ 28.0%
▼起業するってどういう事・・・?
これらのアンケート結果から最初にひとつ、みなさんに伝える事があります。起業をするという事はその事業の決定権はすべて自分にあるという事すよね。もちろん時と場合によりますが、そういう立場になるべき人が、「どちらともいえない」と意思表示を曖昧にする事はいかがなものでしょうか?
1.「はい」も「いいえ」も大きな差はありません。これは周囲の人に左右されな
いと見て良いでしょう。もちろん自分のビジネスですから、出処進退は自分が
決めるべき事なのですが、身近な人に起業経験者がいると、何かと生きた情報
を得られるのでみなさんの周りに企業家がいれば、マメな情報交換できる関係
を結ぶようお勧めします。
2.「はい」が45%と少なめですが、脱サラしてラーメン屋など、趣味が高じる
形での起業なども考えられます。起業を考えてから開業までの準備期間のうち
に経営に関する知識など、出来る限りしっかり準備しておきましょう。
3~4.起業はしたいが、やっぱり不安が・・・まさに企業家のジレンマですね。
起業に踏み切る事を単純に数式であらわすと「希望>不安」です。そのために
は自分の希望を出来るだけ精密な計画に落とし込む事と、周囲の理解をどれだ
け得られるかです。
5~7.起業の思いは地位や社会より「自己実現」ですね。これらをまとめると、
自分の理想やアイディアを実現するための「手段」が起業で、地位や社会貢献
は「目的」を達成した時についてくる「結果」と置き換える事ができます。
もちろん社会貢献が目的の場合もありますが、あまり目的が大きいと現実が
見えにくくなる事があるので注意が必要です。また、どんな事業でも適正な利
益をあげて納税額を増やす事が最大の社会貢献であるという事もお忘れなく。
みなさんの起業は目的がしっかりしていますか?
8~12.人間関係を除いて多くのみなさんが「はい」としています。サラリーマン
と比べて企業家は自由奔放に見えるのでしょう。ですが、すべての事を実現し
ている企業家がどの程度いるのでしょうか?
昔の歌の文句に「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ。」とありました
が、これはみなさん自身でぜひ確かめてください。
これらの思いを実現するためには、二つの方法が考えられます。ひとつは収
入にこだわりを持たない副業としての「プチ起業」です。もうひとつは今まで
誰も気がつかず、起業後も大企業が入り込めない小さな市場で、簡単にまねの
できない「すき間ビジネス」を見つける事でしょう。
起業をすれば会社の組織や就業時間に縛られない自由が存在する事は間違いありませんが、「好きな事が出来る自由」は、同時に「相手から好きに扱われる自由」でもあります。
飛躍した例えですが、戦前にブラジルへ移民して苦労をした人々の様な物です。そこで生き抜く事は容易ではありませんよね? それでも日本を飛び出して行ったのは「希望>不安」が成り立った事にほか他なりません。
今の勤務先の不遇だけで起業をする方や、反面社格や地位を実力と思いすごしている方も多くいますが、はたして世の中の競争と社内のそれとどちらが生存競争が激しいでしょうか?
みなさんの起業が希望ある未来となるよう、可能な限りの準備と自分の立ち位置を良く理解する事を忘れないでください。もし客観的な評価を聞いてみたいという方は、当メルマガの「メルマガ起業相談」まで寄稿をお待ちしています。
それでは、また次回をお楽しみに!
▼今回の参考文献
1.財団法人 中小企業総合研究機構
起業家のスタートアップ活動に関する調査研究
http://www.jsbri.or.jp/new-hp/work/research/pdf/startup/mokuji.pdf