経済レポート読み下し Vol.1 ~中小企業白書2011から~

経済レポート読み下し ~中小企業白書2011から~ 
NPOあつぎみらい21のメールマガジン「かながわ Business Network」に寄稿しました。

伊豫田 中小企業診断士事務所が寄稿したビジネスコラム


経済レポート読み下し
~ 中小企業白書2011から ~


 

 震災から3カ月がたち、政治の混乱が続きますが、いつまでも混乱に甘える状況ではありません。
 そこで、先日中小企業庁から発表された中小企業白書から、気になる統計データを拾って、今後の中小企業が元気になる為のヒントを解説します。

▼2010年度にリーマンショック前の水準へ戻っていた。
(白書11ページ~)

 経済状況を表す指標として、DI(=Diffusion Index、景気動向指数)と言うものがあります。これは、景気の拡大を示している指標の割合を示したもので、50を中心とした0から100の値で示され、大きいほど景気が良い事を意味します。

 白書11ページから16ページの間の中で、業況判断、景況判断、資金繰りのDIが紹介されていますが、どの値をとっても2008年第3四半期に発生したリーマン・ショック以前の状況まで回復していました。

 また、リーマンショック後の金融機関の貸出態度については、16ページの資金繰りDIを見ると震災後急速に悪化していますが、同時に17ページの公的金融の利用実績も高い伸びを示しており、政府の中小企業対策が効果を表し始めたと見て良いでしょう。
 ただし、小規模企業においては、こうした公的支援自体が実施されている事を知らない事が多く、日頃から情報を得られるよう、支援機関や金融機関、専門家などのネットワークを持っておくことが肝要です。

 今回の大震災において、リーマンショックと違うのは、リーマンが全世界の経済減速であったのに比べ、東日本大震災は世界経済レベルで見ると極東の一部の災害と影響が限定的であることです。

 もちろん、半導体などの世界シェアを持つ基幹部品は世界の生産停滞という、大きな波紋を残しましたが、決して新興国を始めとする購買意欲が下がったのではないのです。放射能の風評による日本製品の買い控えを考慮しなければ、輸出が日本経済を牽引する可能性は十分といえます。

 とはいえ、国内産業においては電力供給という不安要素が払拭されない中では、いち早くこのようなリスク要素を低減し、売上を回復させなければなりません。

 国の政策や東電の復旧を待つことなく、現在の状況に見合ったビジネスモデルに移行することが必要です。企業体力で劣る中小企業が、動きの鈍い大企業に勝るには機動力こそが最大の武器となります。

 大企業が15%のエネルギー削減で足止めを余儀なくされる夏場、中小企業が躍進するチャンスと捉え、社長の号令のもと経営革新に挑みましょう。

<参考資料>
日本銀行「金融経済月報」6月号
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1106.pdf

中小企業庁「中小企業白書」2011 第一部 第2章
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h22/h22_1/Hakusyo_part1_chap2_web.pdf