アンケート調査に見る起業家の気持ち Vol.1

アンケート調査に見る起業家の気持ち(第1回) 
NPOあつぎみらい21のメールマガジン「メルマガ起業セミナー」に寄稿しました。

伊豫田 中小企業診断士事務所が寄稿したビジネスコラム


アンケート調査に見る起業家の気持ち
(第1回)


 

▼一念発起、起業を考えてはみたものの・・・

 こんにちは、NPOあつぎみらい21の伊豫田です。
 時折、面白いビジネス視点の解説をするマーケティングのコラムを書いていますが、(財)中小企業総合研究機構が公表している「起業家のスタートアップ活動に関する調査研究」という、読者のみなさんにとって興味あるレポートを見つけたので、何回かに分けて解説していきたいと思います。

▼今回の統計結果

「起業を目指した回数」
  1回 70.7% 2回 16.4% 3回以上 12.8%

「起業を断念した理由上位(複数回答)」
  1.自己資金不足 46.2%
  2.失敗した時のリスクが大きい 27.1%
  3.事業計画の構築が困難 20.9%
  4.勤務先とのしがらみ 17.4%
  5.経営や法律関係の知識不足 16.8%
  6.家族の反対 16.6%
  7.断念しておらず準備を進めている 14.7%
  8.外部資金(借入等)調達難 9.6%
  9.起業パートナーなど経営スタッフの確保難 8.5%
 10.販売先の確保難 7.0%

▼2回目以降の割合が30%という事実

 起業家の7割が1回目という実態を皆さんはどの様にとらえますか? 起業意欲が旺盛ととらえるか、大半の人が1回の失敗であきらめてしまうと見るか・・・

 日本には、一度失敗すると敗者の烙印を押される風潮があることは事実です。起業家に対する融資制度や法規制などが他国に比べ脆弱で、事業が少しでも躓くと銀行から相手にされなくなり、闇金融から友人・親族一同へと借金を重ね、挙句の果てには夜逃げ同然に転居すると言うのは、一昔前のドラマや小説に良くあるパターンですね。

 一方、JETRO(日本貿易振興機構)のレポートによると、アメリカでは企業家の失敗・倒産への寛容さが社会的な文化として存在しているとの事です。法整備が充実しており、きちんと対応していれば一生借金に追われるという事は無く、失敗してもそれを経験として、後の成功につなげる事が出来るのだそうです。
 アメリカン・ドリームは、このような仕組みにも支えられているようですが、日本で起業を目指す皆さんは、失敗・倒産のリスクを、十分に考慮しなければなりません。ですが、成功するためにはトライ&エラーが不可欠です。

皆さんは1回のエラーが致命傷にならないために、

  1.起業のビジョンが明確になっている
  2.机上の事業計画はきちんと出来ている
  3.資金計画(借入も含め)に余裕を持たせている
  4.失敗を軽減するための仕組み(撤退条件、保険加入など)を定めている

                    といった取り組みはしていますか?

▼致命傷を防ぐための事例

 これまでお話してきたとおり、起業を成功させるためには1回で全力を使い果たすのではなく、失敗しても何度でも工夫しながら角度を変えて、少しずつ成功に近づくためのアプローチを心がけてください。
 致命傷を避けるための方法は、進むべき業界などの情報収集はもちろんの事、上の統計が示す様々なリスクを認識し、あらかじめ回避する対策を立ておく事です。

1.自己資金不足
 2つの方法でアプローチしましょう。当たり前の事ですが、一番確実なのは、自己資金で出来るビジネスを考える事です。さもなければお互いの足りないところを補完出来るパートナーを見つけ、ひとりで開業するよりも確実な体制を作り上げるという事も良い手段の一つです。
 また、共有するものはお金だけでなく、技術・ノウハウに始まり設備や機器、店舗に販路などいろいろなことが考えられます。 ただし、企業理念は補完ではなく共有する事を忘れずに。

3.事業計画の構築が困難
 勤務先で経営に関与した人などで無い限り、事業計画をいきなり作ることは困難です。本を読むだけで起業経営のイメージまで湧く人はまずいないでしょう。このメルマガでも紹介している、創業セミナーなどを活用すると、専門家のアドバイスを受けたり、起業家同市のネットワークが出来るのでお勧めです。また、身内からの借金でビジネスを始める場合でも、金融機関へ創業資金の申し込みをして、ビジ
ネスプランを客観的に判断して貰うのも考えられる方法です。

4.勤務先とのしがらみ
 この回答をした人は、勤務先と同じビジネスを考えているのだと思います。単純に勤務先のお客様を持ち逃げすると、トラブルのもとになるので避けましょう。もし既存客相手のビジネスなら、何らかの独自性を主張する仕掛けが必要です。

5.経営や法律関係の知識不足
 確実に知識を補う場合為には専門家の活用が不可欠です。時間と費用のトレードオフになりますが、お近くの商工会議所、商工会や市役所などで産業振興を担当する部門へ問い合わせると相談を受けてくれるでしょう。また、ところにより費用を抑えて専門家への相談をしてくれる支援策もあるので、是非活用してください。

 いかがでしたか?皆さんの起業における壁がどこにあるか、見つめ直すことができたら嬉しいですね。続きは次回に。

▼今回の参考文献

1.財団法人 中小企業総合研究機構
  起業家のスタートアップ活動に関する調査研究
  http://www.jsbri.or.jp/new-hp/work/research/pdf/startup/mokuji.pdf

2.JETRO(日本貿易振興機構) 
  米国中小企業の実態と中小企業政策
  http://www.jetro.go.jp/jfile/report/05000000/05000000_003_BUP_0.pdf